2013-04-01から1ヶ月間の記事一覧

コミュニケーションの重要性と厳しさとがこの本から伝わってくる。安易に対話という言葉が用いられる今日において、大変意味深いものである。そもそも他者と関わることとは、人間が生きていくうえで避けられないことであり、またごくありふれたことでもある…

私にとってたとえそれがどのような旅であろうとそれはいつも北へ向かってゆくものなのだ。間章

言語、イメージを越えないと、何か欠けたものがあると感じられる。一般には言語だけでは飢餓感が残る。謝罪の例がそれである。状況だけが言葉の不足感を救う。「踏み越え」について 中井久夫

存在するとは別の仕方で, あるいは存在することの彼方へ.E.レヴィナス

規範の侵犯でなくとも、性的体験、労働体験、結婚、産児、離婚などは、心理的にそれ以前に戻ることがほとんど不可能な重要な踏み越えであるといってよかろう。「踏み越え」について 中井久夫

もっとも、そういう場は、短期的には誰しも通過するものであって、その時には単なる「自己コントロール」では足りない。おそらく、それを包むゆとり、情緒的なゆるめ感、そして自分は独りではないという感覚、近くは信頼できる友情、広くは価値的なもの、個…

そして自らのなくした風景をなつかしむこともなく、の最中にを見出せるはずなのだが。間章

散文は昨日生まれたもの。フローベール

世界そのものの始原の日日の寂しさは,小児にとって未来とおなじくらいなつかしく,現在とおなじくらい測り知れなかったが、冒頭の見ひらきでいきなりそこにさわれた.そこにはまた7おん5おんのはずみをびみょうにかわした散文の息づかいもまじっていたし,い…

自己抑制をしている人が嘲笑され、少数派として迫害され、美学的にダサイと自分も感じられるような家庭的・仲間的・社会的環境は、「自己コントロール」を維持するために内的・外的緊張を生むもので、長期的には「自己コントロール」は苦行となり、虚無感が…

魂というのは人間の皮膚が自分自身に接触するところに生まれている。鷲田清一

其の後御変り御座居ませんか私は御蔭様で元気で毎日練習致して居ります故御安心下さい又出発の際色々と御世話に成り厚く御礼申上げます私は来る十七日インデアン人と初試合をやります毎日暑いので海につかりぱなしです。どうぞ皆々様に宜敷くお伝へ下さいお…

先ほど中井先生が二十九番目に述べられた「暴力としての身体」も非常に面白かったのですが、暴力というものを考えるときに、むしろ「まとめる暴力」、つまりバラバラになったものをまとめるような暴力もあるかと思いました。鷲田清一 暴力をふるうことによっ…

俺が何かしているんだという主語が非常にはっきりしているときというのは、治療は上手いこといってません。中井久夫

診察が上手くいっている時いうのは自分の身体の境界というのは感じません。全然感じないです。しかし不安はないですね。自分があるのかないのかあまり問題にならない。中井久夫

長びきすぎている執着だとおとなにもなかまにもかくされ,それでいてそんなたじろぎは犬へのうらぎりだとうしろめたがられ,だからもはや寵しているのか怖れているのか,うらがわのひそかなあけくれへの熱中は娯しみであるよりは強迫であり,暗い時祷,不吉な歳時…

たいがいならもたなくてももたないとかんがえもしないでいる測鉛を身のうちにしこんでいて,楽器から楽器へとへめぐっている矯正人がたたくと,楽器は楽器としてではなく,どこかべつの世界を探知する器具のようにわびしく鳴り,不安なのぼりおりが澄んだり濁っ…

おぼえないまま,あえておぼえたいと執するのでもないまま,そんなふうにすべりぬけさせてしまうことの,聞きすごしてしまうこと取りこぼしてしまうことの愁いのようなもの,すさみのようなものが,しきりに未熟練者たちに降りつもっていく.『累成体明寂』黒田夏子

乗りこなせない馬を放牧しているようで,それでもまた街の重さにまでなりかけていた.『累成体明寂』黒田夏子

やがてまたゆきさきが変わって明るいがわからふりむかれるだけになると,そちらのすじは湿って暗い緑いろのきれはしに還った.よこみちのはばをよぎるわずかな足かずのあいだ,反転してそこを歩く者にふりむかれているようでもあった.『累成体明寂』黒田夏子

あたうるかぎり素にちかいはずの途上でさえ,行ったさき帰ったさきでの役わりや仮面に気ぜわしく気づかわしく身がまえていることが多くなった伸長期の群棲動物が,ひさびさにさわった純度の高い個だった.それを手ばなさない静かな覚悟のように,いっしゅんの鳥…

宙に浮くものも影をもつことにとつぜんおどろいたうかつな歩行者をおどろきとともになつかしさがひたした.『累成体明寂』黒田夏子

4つの方向のそれぞれから行ける千の時空万の情緒におそわれてふと立ちすくむ宵やみのおくに,はるかな波のとどろきが打ちかえした.『累成体明寂』黒田夏子

総体にいくらかでも似たことばにとどかなくて,とどかないということばにもとどかないもどかしさをもかさねためながら,数万かい4つかどは通りかかられた.『累成体明寂』黒田夏子

ところが、ある地点に辿り着くと、不意に一挙に霧が晴れるようにしてくっきりとした風景が、変転を重ねながらも目の前に浮かび上がり、それまでの難路の労苦を癒してくれると同時に、ぐっと前進に弾みがつき、歩行が楽になる。平岡篤頼「路面電車」あとがき

気象学と精神医学には類似点がいくつもある。実際上枚挙できないほど非常に多数の因子が働いて、比較的単純に記述できる少数の状態(晴天、曇天、雨天など)を地球上の任意の一点において作り出しているのが気象である。中井久夫

翻訳が大きく無意識に根ざすものであることは私も詩翻訳体験にもとづいて何度か述べたことである。中井久夫

言語は一般にイメージを悪夢化から救い、貧困化し。晴朗化する。夢が覚醒後にたどる変化を思い浮かべてみればよい。夢は言語化されると、単純化し、一般に圧力が減り、人に語れるものになる。いわば、通分される。中井久夫

なぜか部屋で缶ビール一杯により酩酊してしまう。友人のライブ音源をMP3で聴いてさらに心地よい気分になる。ドイツ製の日付スタンプを購入してあたりかまわず押印する。集めた資料、読み終わった本、書き付けたメモなどに日付を押して読み返すと時間の経…