たいがいならもたなくてももたないとかんがえもしないでいる測鉛を身のうちにしこんでいて,楽器から楽器へとへめぐっている矯正人がたたくと,楽器は楽器としてではなく,どこかべつの世界を探知する器具のようにわびしく鳴り,不安なのぼりおりが澄んだり濁ったりしてとめどもなかった.『累成体明寂』黒田夏子