ところがトーリーが手早く、事務的な感じがするほどじつにあっさりと、私に背中を向けてではあったが、紫のセーターを脱いで、ブラウスのボタンを外し、下着まで取って両腕を軽く上げたとき、ほんの一瞬だが、黒い腋毛の剃り残しが見えた。髪はブロンドなのに、確かにそれは黒い腋毛だった。そのときに私は、この女と結婚しなくてはならない、と知らされた。『眼と太陽』磯崎憲一郎