ヴェンダース監督の「Pina\ピナ・バウシュ 踊り続けるいのち」を見んがためにわざわざ高速バスに乗って隣県へ。大勢が途中の繁華街で降車するものの、私と二十代後半くらいの女性三人組がバスの中に残って最終地まで向かう。私の存在に気がつかなかったのか、三人はそこが自分たちの部屋であるかのように大声で会話を始める。あれ、ぜったい禿げちょんやろう。禿をごまかした坊主とおしゃれの坊主とはなんとなく違うやん。お見合いの写真と会った時のイメージが全然違うんやけど。いままで年上好みやったけど、もうこれから年下狙っていくわあ。結婚してから徐々に禿げ始めるのはいいけど、はじめっから禿げてるのはいやや。そんな会話がオープンになされながら、バスから降りるときに三人とも元気に「ありがとうございました!」と運転手さんに挨拶してはじけるような清涼感を残していった。大型映画館は入る前から座席を指定しなくてはならず、ちょっと前過ぎてしまって後から変更もできず後悔しつつも、上映が始まれば没頭する。3Dであることをいい意味で忘れたから、3D映画として成功だと思う。荒川修作が重要な芸術は建築とダンスだけみたいなことを言っていたのを思い出す。身体操法を変えること。文法を変え、生き方を変え、世界を変える。あえて言うが、いまみながするように歩かなければいけないということは、ない。丸善でミシェル・レリスの『幻のアフリカ』を購入。1,000ページ以上の平凡社ライブラリーの背表紙の厚みが素晴らしい。それが購入の背中を押したとさえ言える。帰りのバスはずっと寝ていた。そういうふうに昨日を過ごした。track13



自分の言葉が消えるときになぜ泣かないのか。荒川修作