万年筆で書いてみたくなる小説のタイトルがある。いやただ最近買った万年筆を使いたいだけかもしれない。
タイトルは重要。タイトルは読んでいる間中ずっと作品の中身と照応し続けている関係にある。微かにでも。
小島信夫の小説『別れる理由』は、小島氏ははじめ『別れない理由』としていたらしいが、
畏友森敦氏に絶対『別れる理由』にすべきと迫られたエピソードをどこかで読んだ。
いやこれは確か『別れる理由』のなかに書いてあった。錯覚かもしれない。未来のことかもしれない。
ぼくは読んでいる間中、この小説のタイトルが『別れる理由』であることに緊張していた。すごい。