「おれが差す部分の名称を言え、ええか。」
「はい。」
 私は、大前田の右人差し指の動きを追って、「照星、㮶杖、上帯、下帯、木被、照尺、照尺鈑、遊標、遊底覆、槓桿、用心鉄、引鉄、弾倉底鈑、上支鉄、下支鉄、銃把、床尾、床尾鈑、床嘴。」と正確に、澱みなく唱えた。当てはずれと苛立ちとの表情をあらわに示して、彼は、銃を卓上に載せると、右手に槓桿を荒荒しく握り起こし、遊底を一杯に開いた。
「これ。」
「撃茎駐胛、弾倉、薬室、遊底駐子。」
 大前田は、左親指を遊底駐子頭にかけ、駐子を左に開いて、遊底を尾筒から抜き取り、遊底覆を取り除けた。
「円筒、抽筒子、橢円窓、撃針、撃針孔。」
 彼は、右手の平の基部で撃茎駐胛の後面を圧し、それを右にまわして遊底を分解しようとしたが、さすがにそこで思い止まった。


神聖喜劇大西巨人