私がはじめてベルリンという地名に木霊するものを自分の中に感じたのは、ベンヤミンの本に出会ったときだった。一九六〇年代の終りから、その著作集が日本でも翻訳されはじめていた。とくにそのうちの文学的なものといえる『ベルリンの幼年時代』を読んだとき、私はたちまちその見知らぬ都会に抱きすくめられたような気がした。『鳥を探しに』平出隆