この野原が道に向って両方からゆっくり降りて来る形で低い丘陵に囲まれていて森もあることまでがそこの道を歩いている男の都合を考えてのことだったかどうかは解らない。その方々に森が見えるだけでなくて一本立ちの大木が道に影を投げていることもあってその下を通る時に男は森の中にいることを思った。『一人旅』吉田健一