音というしずくに内側からうつる世界のなかのものと人間。だが、音がうつしているのは、それだけではなかった。
音がめざめる前の音は何だろう。音というこの空間はどこからでてくるのだろう。見えない世界、音の裏側にある何もふくんでいない空間、要素をもたない空の集合。そこから音がひらくとき、それは窓になって、世界と世界でない場所の間にひらく。
カフカ 夜の時間』高橋悠治