どうせぶつぶつ文句を言っているか、そうでなければ眠っているか、どちらかなんだから…晴れてさえくれれば大抵のことは我慢できるんだけどなあ…日の光が当たって初めて、それが本当は何だったのか分かるということもあるのだし…途切れ途切れ聞こえる小さな声はそれを発している人の口の動きと合っていないようにも見えた。『脱走』磯崎憲一郎