五人がおたがいに紹介しあった。荒川は、漆黒の頭髪が波打ち、きゅっとしまった容貌の真中に黒ダイヤの眼が光る。私には見えないものをふくめて、実に多くのものをみつめてきた眼だ。日本人にしては白い肌がニスの光沢を帯びて深いところから赤みがさしているのを、ほとんど美しいと、私は思った。動作はむしろぎこちなかった。時折、顔面をくしゃくしゃさせた。稲妻のように素早く—。『記憶の肖像』中井久夫