ドン・キホーテ』という小説は、ドン・キホーテがドゥルシネーアを思い浮かべながら、えんえんと旅をする、一生懸命奮闘するという小説ですが、そういうドゥルシネーアのような人を持たなければ、人間はダメなんだ。そんな言い方を、中沢新一はしていたように記憶しています。『小説の楽しみ』小島信夫