ナカシマは実家が寺で、だから仏教の大学に通っていたのだけれど、深く仏教を勉強するためにと葬儀屋でアルバイトをしていた。少しにおうと線香代わりにすぐ遺体にファブリーズをかける課長を見て、しばらくは「信じられない」と文句をいっていたのだが、最近では率先して遺体がにおうとナカシマがファブリーズをかけた。どこでもそうなのかわたしはよく知らなかったのだけれど、ここでは遺体が少しにおうとみな躊躇なく遺体にファブリーズをかけた。『緑のさる』山下澄人