十二月の冷たい空気のなかで、何千何万という葉のすべては濡れたような金色に輝き、その光かたはまるでその一枚一枚がそれぞれの輝きを鳴らしながら、僕のなかへとめどもなく流れこんでくるかのようだった。僕は息をのんで、その流れに身をまかせるしかなかった。一秒がつぎの一秒へたどりつくそのあいだの距離が、なにか大きなものの手によってそっと引きのばされているのを僕は感じていた。『ヘヴン』川上未映子