二十七歳の強壮な男は…彼はペトロパヴロフスク要塞監獄に八ヶ月いるあいだも胃や痔を悪くしたようだが、大してへばらなかった。狂ったものもいたが、そういうことはなかった。そのかわり小説を二つばかり書いた。それが健康法だったともいわれる。そういうふうにいうなら、彼のシベリア監獄での生活や、彼の全生涯についてもそうだということも出来る。『私の作家遍歴』小島信夫