内山は雨が好きだった。それは雨が出来損ないの町も先ず見られるものにして町らしい町ならばその風格を増すからばかりでなくて内山自身が雨が降っているとその音と何かその時にいる場所の他は水の中になっている感じで神経が鎮められるようである為だった。吉田健一『金沢』