「二人が愛し合うという物語は、結局いつもセクシャルな欲求の成就か、あるいは家庭という制度への順応といった結末しかもたらさない。愛の果てには本当にそれしかないのだろうか?そうでもないだろう。というのが私の生きている実感であり、この映画の発想の原点となった。
私にはどうしても、二人の愛は永遠であるように思える。だが、世界はその永遠性を保証するのに、生殖や結婚といったシステムしか用意しない。このシステムを拒絶した二人にとっては、おそらく愛はひとつの不幸だ。やがて自分自身をも見失う。愛こそが二人を翻弄する。それでも二人は永遠の愛の中で生きていこうとする。たとえそれが大いなる幻影であったとしても」 黒沢清大いなる幻影