「『アンチ・オイディプス』は難解で専門家でも理解できないと言われていますが」と問われて、ドゥルーズは「分からない のは専門家だけです」と平然と答えた。実際に彼は、看護師や港湾労働者が読んでくれて、彼女ら彼らから熱心なファンレターをもらって感激したと言っていま す。ドゥルーズはそれを「遭遇」と言います。確かに入門書も読まず学歴もなく正規の教育課程も踏まない人々に、あのような二〇世紀屈指の難解さを誇る本が 読まれるというのは「遭遇」どころか「奇跡」に近いことでしょう。しかし、それくらいの奇跡はこの世界で簡単に起こるのです。佐々木中